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2009年4 月 9日 (木)

外鼻孔狭窄

近年、ボストンテリアやフレンチブルドッグ、パグ、ペキニーズなどの犬種に代表される短頭種(いわゆる鼻の短い犬種)の人気は高く、来院されるワンちゃんの数も増えてきました。

 

そんな彼らはいつも口を大きく、口角を上げて呼吸をしています。ニコッと笑っているようにも見えますが、じつは苦しいのです。独特な呼吸の音(鼻から喉にかけてガーガーと音をたてて呼吸する)や、いびきも年齢とともに大きくなってきます。 

 

こういった呼吸の症状は 短頭種気道症候群 という病気に関連し、熱中症や麻酔のリスク、突然死といったものに大きく関与してきます。

 

写真はフレンチブルドッグのお鼻です。

このワンコは以前に熱中症で入院し危篤状態となり輸血までしました。

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他の犬種と比べてみると鼻の穴が狭くなっていることがわかります。

 

これは 外鼻孔狭窄(がいびこうきょうさく) といい、空気の通りが悪く、わずかな運動や気温の上昇でも、すぐに呼吸が苦しくなります。

また、呼吸数が増えると強い陰圧によって喉や気道に炎症をきたし、粘膜が腫れて気道が狭くなり、さらに呼吸がしづらくなっていきます。

毎日少しずつ病気が進行し、日常生活に支障がでたり、最悪の場合呼吸不全による突然死を招きます。

 

これは先ほどのフレンチブルドッグの手術の写真です。

喉の奥を見てみると、まだ軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)にはなっていなかったので、

今回は外鼻孔を拡張させることにしました。

お鼻の一部を切除し、鼻の穴が外側に開くように縫合します。

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術後はいびきも減り、呼吸も楽そうになったそうです。

お鼻から酸素をたくさん吸って、他のワンちゃん達と楽しく遊んで、長生きしてほしいですね。

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今回は喉のほうに異常がなく、比較的早期であったため鼻だけの手術ですみましたが、進行した状態では、軟口蓋や喉頭部などの手術も必要になり、麻酔のリスクも高くなります。

より安全に、最大限の効果を得るためには、より早い段階(なるべく4歳未満)での手術が理想的です。

 

もしおうちのワンちゃんの呼吸やいびきについて気になる方や、手術に興味のある方は当院にご相談下さい。

2008年12 月 9日 (火)

水腎症

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こちらの猫ちゃんは、8歳の男の子で、元気、食欲はあるものの、飲水量、尿量が増加しているかもしれないとのことで来院されました。

中~高齢の猫ちゃんで飲水量が増加するというと、糖尿病や腎不全などが疑われますが、血液検査、レントゲン検査、超音波検査の結果、左側の腎臓に液体がたまり大きく腫れていることがわかりました。

その後の検査において、右側の腎臓の機能に問題がないことと、腫れている左側の腎臓は尿を作っていないことがわかりました。

このレントゲン写真は、尿路造影といって、おしっこを作る過程に問題がないかどうかを確認することができます。(よくみると右側の腎臓にだけ白い造影剤が流れていることがわかります)

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左側の腎臓に貯まった液体を抜いても、わずかな期間で元に戻ってしまい、将来的には、圧迫や癒着による周囲臓器の障害が心配されることから、手術により摘出することをおすすめしました。

写真は摘出した左腎で中の液体を抜いた状態です。袋状で中に腎臓の構造は殆どなく、病理検査において水腎症(すいじんしょう)という結果がかえってきました。

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現在は残った右側の腎臓の負担をできるだけ減らすため、処方食や定期検査を行っています。

元気や食欲があっても、飲水量や尿量が増加していたら病気のサインの場合がありますので検査をすることをおすすめします。

逆さまつ毛(さかさまつげ)

流涙症、涙やけといった、普段から涙が多く、眼の周り、とくに内側の毛が茶色に変色しているワンちゃんをときおり目にします。

多くは元気や食欲などに変化がないため、飼主さんも見なれてしまって、様子を見られる方も多いのではないでしょうか?

まめに目ヤニや涙をふいて、清潔にしておければよいのですが、時に涙で炎症を起こした眼の周りの皮膚から感染をおこし、結膜炎や角膜炎をおこすこともあります。

原因として多いのは、余分な涙を鼻や口の中に排出する、鼻涙管という管がつまって涙があふれてしまう鼻涙管閉塞と、意外によくみられるのが、いわゆる『逆さまつ毛』が角膜を刺激し、涙が増えるというパターンです。

この子もよくみると、下のまぶたから細い毛が数本、角膜に向かってはえています。

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病院では角膜の刺激を低減する局所麻酔の目薬と、角の丸いピンセットを使って安全に抜くことができます。永久脱毛ではないので、定期的に抜かなくてはいけませんが、全身麻酔の必要がないので高齢のワンちゃんでも処置をすることができます。

おうちで逆さまつ毛をみつけても、人用の毛抜きやピンセットでは、かえって角膜に傷を作ってしまう可能性があるので、無理はせず病院にご相談下さい。

2008年9 月14日 (日)

肛門周囲腺腫

犬では最も一般的な肛門周囲の腫瘍で、去勢手術をしていない中~高齢の雄犬に多くみられます。

多くは良性ですが、悪性の肛門周囲腺癌とはみためでは区別がつきません。

雌に発生した場合は悪性であることが多いようです。

複数の腫瘍が同時に発生することもあり、また良性であっても、大きく腫れると出血したり、便が出にくくなるなど、生活の質の低下をひきおこします。

ホルモン剤などを使った内科的な治療もありますが、ずっと飲ませることや副作用を考えると手術による切除をおすすめしています。同時に去勢手術をすることがすすめられています。

写真は12歳のコーギーの男の子で、手術前に撮影したものです。

肛門の左斜め下側に出血を伴う腫瘤が認められます。

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手術により切除し、病理検査の結果は良性の肛門周囲腺腫でした。

抜糸後の写真です。傷はきれいに治癒し毛が生えてきました。

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今回は良性でしたが、まれに悪性の肛門周囲腺癌のこともあり、この場合早期の切除手術で治癒は可能ですが、転移のある場合、予後不良となるため注意が必要です。

先にも述べましたが、見た目では良性か悪性の区別はつきませんので、もし、肛門の周りにしこりを見つけたら、早めに病院にご相談下さい。

2008年5 月11日 (日)

直腸ポリープ

猫よりも犬に発生が多く、雌雄差はありません。プードル、エアデールテリア、シェパード、コリーで発生率が高いといわれています。

中~高齢での発生が多いとされていますが、2歳未満での発生もみられます。

便に血液や粘液が付着することで発見されますが、下痢を伴うことは少ないようです。

進行すると、排便時のしぶりや、疼痛、便秘の原因となります。

写真はフレンチブルドッグ(2歳、♂)で直腸ポリープの手術時に撮影したものです。

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このワンちゃんの場合、便に赤い血液がつくという以外、特に下痢などの症状はみられませんでした。病院での直腸検査にて肛門から約1センチの背側に、直径約5ミリのポリープが発生していました。

手術でポリープを切除、吸収糸で粘膜を縫合しました。病理検査の結果は、良性なので再発の可能性は低いとのことでした。

会陰ヘルニア

5才以上の雄犬、特に去勢手術をしていない場合に圧倒的に発生の多い病気です。

排便時に肛門下側の左右いずれか(時に両方)が膨れることによって気づかれますが、注意していないと見過ごしてしまうこともあります。(排便時以外は膨らみが目立たないこともあります)

原因は肛門周囲でおなかの臓器をささえている筋肉がうすくなり、直腸(まれに膀胱や他の臓器)が脱出するためにおこります。

その殆どが去勢していない雄犬に発生するため、筋肉がうすくなる原因として男性ホルモンの影響が考えられています。

重度になると腸閉塞や絞扼(血流が悪くなり腸が壊死してしまう)、時に膀胱の脱出による排尿障害のため短期間のうちに命をおびやかすこともあります。

治療は、手術で筋肉を縫い合わせ、腸の脱出をふせぎます。再発の予防のため、同時に去勢手術を行うことがすすめられます。

一度うすくなった筋肉は、あとで去勢手術をしても元にもどりません。そのため予防には、若い年齢での去勢手術が必要となります。

写真は6歳のミニチュア・ダックスの男の子の手術前の写真です。

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おしりの右下が膨らんでいて、この中に直腸が脱出していました。

手術後の写真です。

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直腸を元の位置に戻し、やぶれた筋肉を縫い合わせました。同時に去勢手術も行いました。

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